(その)神は去った
行きつけの喫茶店の店主は髭を生やした中年男性で、調度品にも店内BGMにも“彼らしさ”を称えていたため、店主から「残念ながら、来週末が最後の出勤となりました。次は系列の洋食店で店主をします」という報せに
“そもそもここは彼の個人店ではなかったのか”と驚き、それから最終出勤日までに3度、暇を見ては親愛さを煮詰めたクラムチャウダーを啜りに訪れました。
新しい店主は胸筋の発達した若い男性で、前の店主が残したレシピや調度品を引き継いだのでしょうが、やはり、しかし驚くほどに差異が見受けられます。いつもの充足感を見積もるものの、完食した時点で肉体は「いつもと違う」と不足を訴えます。旧店主はほんの僅かな差(お湯の温度なのかハムの分厚さなのか)をもって『神は細部に宿る』を体現していたのでしょう。
僅差は試行錯誤で築くもの、新店主が別の神を呼び込むには時間が必要なようです。(2017.06.20)
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